紗羅と咲、宿命の女の戦い 12話
「お母様は...自ら死を選ばれたわけですわね...」
紗羅は、冷静な口調で父親である毅に告げた。
「...紗羅、君は全てを知ってしまったようだね。こんな日がいつか来ると思っていたよ」
窓際に向いていた毅は、ゆっくりと紗羅の方に向きを代えた。
「あぁ!紗羅。お父さんは最期までお母さんを救えなかった。僕たちは出逢ってはいけなかったのかもしれない。出逢いさえしなければ...!」
「お父様、何も言わないで。すべてはあの一族の哀しき運命ですわ...そう、美肌一族の!」
肩を落として涙を流す父親を抱きしめたい衝動に駆られた紗羅であったが、じっと堪えた。
自ら死を選んでしまった母親、最愛の女性を失った父親、自分の愛する肉親が担っていた哀しき運命―。
あんなに美しく華やかに見えた母親に隠されていた秘密を知った今、これまで通りには生きていく訳には行かないことを受け止めざるを得なかった。
財乃宮紗羅、21歳。
人生が大きく変わった瞬間(とき)であった。