紗羅と咲、宿命の女の戦い 11話
「こ...これは...?」
紗羅が手にしたのは、亡くなった母、真貴の日記帳であった。
頁をめくると、―まだ見ぬ愛しい我が子へ―と記されており、恐らく紗羅をお腹に宿した頃より、毎日書いていたようであった。
愛する夫と愛の日々、可愛い我が娘の成長、自分の仕事のことなど、そこには大好きだった母親の全てが記されていた―。
何よりも夫である毅を心から愛していたことが、ひしひしと伝わってきた。
最後の頁を開こうとしたとき、白い封筒が挟まれていた。厚みのある封筒には、
「愛する我が娘 紗羅へ」
と書かれており、紗羅は夢中になって封を開けた。
『紗羅、これをあなたが読む頃は、きっとわたくしはこの世にはいないことでしょう。あなたには本当のことを話さなくてはいけないの。
これから書かれていることは全て本当のこと。』
紗羅は、母親が自分に宛てた手紙を読み終えるやいなや、蒼白した顔になっていた。
「お母様っ!だからだったのねっ!お母様は時々いつも悲しくて寂しそうな瞳をして、遠くを見つめていらっしゃった...」
それから、紗羅はしばらく母屋に滞在し、何かを決意したように本宅に戻った。
「紗羅お嬢様!どちらにいらっしゃったのですか?心配いたしました!」
メイドのすみれは、行方不明になった紗羅を見つけると、そう話しかけた。
「すみれ、心配かけてごめんなさい。お父様はどちらに?」
「旦那様は書斎にいらっしゃいます...お嬢様...?」
紗羅は2階に上がり、父の書斎をノックした。
「お父様...入ってもよろしいかしら?」
紗羅はそう言って中に入った。
父・毅は窓をじっと見つめていた。
父の後ろ姿に向かって、紗羅はこう静かに告げた―。
「お父様、お母様は自ら命を絶たれたのですわね」