紗羅と咲、宿命の女の戦い 15話
「あなたのお母さんは、本当に美しかったわ」
ダリアは目を細め、思い出すように語りはじめた。
「真貴は小さいころから、それはそれはとても綺麗な娘だったわ。大人になるにつれ、その美しさには母親のわたしですら息を飲むほどだった。親ばかではなくてね、本当に自慢の娘だった」
そしてダリアは美肌家の跡目を継ぐ者としての真貴への期待が日増しに膨らんでいったこと。そして、美肌家の伝統ある地位と名誉を守る後継者として育てるため、真貴に多額の投資をしてしまったこと。
それ故、今思えばダリアの過剰な期待が、知らずのうちに真貴の負担になっていったことをその時には気づかなかったとこぼした。
「そして、真貴はあなたの父親と出逢い恋に落ち、結婚をすると言い出したのよ。わたしには認める事が出来なかった。美肌家を継ぐ者としては、許されない行為だったから!」
紗羅は白い椅子に腰をかけ、じっと耳を傾けている。
「貴女のお母さんは最後まで美肌家の跡継ぎと結婚に悩んでいた様子だったわ・・・。けれど、あの娘は結婚を決めた。それがなぜだか分かるかしら?」
紗羅は少し考える表情をみせたあと、ハッとした表情でダリアを見た。ダリアは黙って静かにうなずいた。
「そうよ。あのとき、あの娘のお腹のなかに紗羅、貴女がいることを知ったからよ。真貴は美肌家の跡を継ぐことを諦め、結婚して貴女を産んだのよ」