紗羅と咲、宿命の女の戦い 19話
紗羅が、突然姿をくらましてから半年――。
日本最古たる豪国ホテルの大広間では、多くのマスコミ陣で溢れかえっている。
壇上には、美肌家八代目当主・美肌ダリアが凛として座っている。
「本日はお忙しいなかお集まりいただき、まことにありがとうございます。
本日お集まりいただきましたのは、わたくしめの美肌一族代表の退任をお知らせすると共に、美肌家の後継者を皆様にご紹介させていただきます」
「やはり…!」「ついに来たかっ!」
マスコミ陣は、カメラを持つ手を整えた。
美の頂点を極め、その資産は数千億を超えると云われる美肌一族の世襲は、世界中が注目を集めるビックニュースである。
「ご紹介させていただきます、紗羅入りなさい」
舞台袖から現れた紗羅は、この世のモノとは思えない程の透き通るような肌の輝きを放っており、その雰囲気は以前とはまるで別人のようだった。
天真爛漫で明るい紗羅の柔和な笑顔は姿を消し、そのかわりに幾分も大人びた雰囲気をまとい、凛とした佇まいが紗羅に備わっていた。
「いまわたくしの横にいる財之宮紗羅が、本日から正式に“美肌家九代目”として襲名することをここに発表させていただきます」
会場からは眩しいばかりのフラッシュが一斉にたかれていた。
「加えて、初代美肌家当主と同名であることにお気づきの方もいらっしゃいますかと思います。この九代目紗羅が、美肌家最後の直系の血を受け継ぐ最期の子孫であります!」