紗羅と咲、宿命の女の戦い 22話
銀座一等地にある美肌エージェンシー。
そのビルの屋上に、櫻小路達哉と美肌紗羅の二人の姿があった。
「しかし、驚いたよ!
今をときめくあの美肌紗羅が、まさか財之宮紗羅、キミだったなんてね」
「達哉先輩、本当に久しぶりですわ! わたくし、きちんと先輩にご挨拶もしないまま帰国してしまって・・・でも、またお逢いできて光栄ですわ!」
「イタリアにいた頃の君と、いま僕の目の前にいるキミが同じ人だなんて信じられないよ」
紗羅は記憶の片隅からずっとなくなることのなかった存在である達哉を目の前にして、思わず無邪気に微笑んだ。
その笑顔はイタリア留学していたころの紗羅そのものだった。
しかし、紗羅は心を落ち着かせるように自分に言い聞かせながら、瞬時にクールな笑顔に整えた。
「あの展望台で日が暮れるまで話したことを覚えているかい?お転婆でやんちゃなあのお嬢さんが、美肌家を継ぐとはねっ!」
「嫌だわ、先輩。わたくしはもうあの頃のわたくしではなくってよ」
すると達哉は優しく目をほそめた。
「いいや、君はあの頃の君のままだ。見た目は変わっても、透き通るような瞳の奥にあるモノはなんにも変わってないさ」
「先輩・・・」
紗羅は思いがけない達哉の台詞に心をグッと鷲掴みされたようになり、涙が溢れ出てきた。
紗羅は達哉のそばに寄ると、そっと達哉の肩にもたれかかった――。
二人は偶然再会し、あのとき感じた淡い恋心を思い出していた。
そのとき、二人は気づかなかった。
二人のテーブルのから死角になった場所からカメラのレンズが覗いていたことを。