紗羅と咲、宿命の女の戦い 25話
2人はどこに行っても注目の的となっていた。
それもそのはず、今をトキメク美肌家の後継者と櫻小路財閥の御曹司とのロマンスは、「今世紀最高のカップル♥」と連日マスコミを賑わせていた。
仕掛けられた罠とも知らず、逢瀬を重ねる紗羅と達哉。
その日もホテルのスィートルームで人目を忍ぶように密会を果たしていた。
「紗羅、ごめんよ。もう限られた場所でしか逢えなくなってしまった」
「先輩・・・」
「あのイタリアの空の下で微笑む君は、本当に無邪気だった。もうあんな風に自由に歩き回る君を見れないのかも知れない」
「先輩、わたくし本当に幸せよ!
こんな風に抱きしめられるだけで十分なのよ」
ベッドで二人は見つめ合い抱きしめ合ったー。
櫻小路達哉は御曹司の名に負ける事なく、大手広告代理店の若きホープとして期待され、いくつもの仕事を抱えてはあくせくと追われる日常を送っていた。
そんなある日――。
達哉は出先での打ち合わせを終えた後、遅めのランチを取っていた。
窓の外は雲行きが怪しくなりはじめ、ゴロゴロと遠くから雷鳴が聞こえてきている。
降る前に戻らなくちゃ、と一人呟いた達哉が席を立とうとすると、
「櫻小路さん、かしら・・・」と呼ぶ声が背後から聞こえた。
達哉が振り向くと、そこにはサングラス姿の女が一人立っている。
女がサングラスをゆっくり外すと達哉は「あっ!」と声を漏らした。
「祐天寺、咲さんですよね?」