紗羅と咲、宿命の女の戦い 27話
「ウゥッ・・・」
達哉はズキズキと痛む頭を手でおさえながらゆっくりと目を開けた。
身体を少し起こすと頭がさらに痛みだした。
「あれ?ここは・・・」
寝ぼけたまま達哉は周りを見渡すとそこはホテルの一室だった。
「え・・・? なんでオレはここに」
昨夜の記憶を必死で思いだそうとしていると、バスルームの扉が開く音がした。
扉から出てきたのは、バスローブ姿の祐天寺咲であった。
「お目覚めかしら?」
タオルで髪を拭く咲がキングサイズのベッドに近づいていくる、裸の自分—。
全てを一瞬で悟った。
「もしかして、、、僕たち、、、」
達哉は愕然とした。かけがえのない紗羅の笑顔が思い浮かぶ。
「昨夜の貴方、とても素敵だったわ♥」
咲はそっと達哉の頬に手をあてた。
温かい咲の手と反して、達哉の表情は青ざめ冷たくなっていった。
達哉は咲の手を払いのけ、慌ててホテルを飛び出してしまった。
オフィス街の人の流れとは逆に歩く達哉。徐々に達哉の頭の中に記憶が蘇ってくる。
昨夜のbarに二人で行ったこと、咲の白く艶かしい肌がまぶしかったこと、ただ2杯目のワインを呑んでからの記憶はなかった。ただ、あまりにも状況証拠が揃いすぎていた。
「あぁ、僕はなんてことをしてしまったんだ!大切な紗羅がいるのにッ!」
ビルの上に優しく微笑む紗羅の看板が、いっそう達哉を責め立てるのであった。