美肌一族

これが初代の美肌一族。
もう1つのストーリー

紗羅と咲、宿命の女の戦い 29話

依然として達哉からの連絡が途絶えたままの日々が続いていた。
今日は、達哉が紗羅のために初めてとってくれた広告の撮影日であり、大人気バッグブランド「ボッデガ・タバサ」の日本人初のメインモデルに紗羅が起用されたのである。
紗羅は朝からソワソワしていた。
連絡の取れない達哉も当然この撮影には立ち会うはずであり、久しぶりに達哉と逢える喜びが紗羅を一段と輝かせていた。
某スタジオの楽屋で衣裳に着替えた紗羅は、真っ白いフワフワしたチュチュにスパンコールがちりばめられたノースリーブ、綺麗に巻かれた髪にはリボンが、エクステなど必要のない長い睫毛、吸い込まれるような大きな瞳に触れると弾けるような肌にとろけるような唇、そしてスラリと伸びた素足に纏う真っ赤なピンヒール。
どこから見ても男性がほっておけない“国民の妖精”そのものであった。
「紗羅、いいわよ。今日はなんだか肌のツヤがいいわね♪」
朝から挨拶回りで忙しい鮫島女史はようやく紗羅に声を掛けた。
「あ、鮫島さん! 達哉さんを見かけなくって?」
「そういえば、まだ見ないわね・・・あ! 広報部長! 今日はよろしくお願いします!」
ゆっくり話す暇もなく鮫島女史はまた仕事に戻っていった。
「本番、入りまーす!」
それまで騒々しかったスタジオの空気が一気に張りつめ、撮影の緊張感を醸し出しはじめた。
ピンクやベージュの小振りなバッグを片手に持ちながら可愛らしくお尻を突き出す紗羅のその姿は、男性だけでなく女性までをも虜にしてしまうほどの可憐さであった。
撮影が順調に進んでいたそのとき、スタジオの片隅からガラスが割れる音が大きく鳴った。
「な、なんですってっ!!!!」
静まり返ったスタジオに鮫島女史の悲鳴とも言える声が響いた。