紗羅と咲、宿命の女の戦い 30話
鮫島女史の悲鳴をきっかけにスタジオ中がざわめきはじめた。
「いったいどうなってんのかしら?」
「何事だ?!」
鮫島女史は怒り心頭の様子で顔を真っ赤にして局長に詰め寄っている。
尋常ではないスタジオの様子を見て、紗羅の専属スタイリストが
「さっ、紗羅、いったん楽屋に戻りましょう。心配しなくていいから、ね」
「ええ。そうさせていただくわ。」
紗羅一行がスタジオを出ようと出口に向かったその時、スタジオの扉がけたたましい音をたてて開いた。
扉の向こうから入ってきた集団の中には、ずっと逢いたくてたまらなかった愛しい男性の姿が見えた。
『達哉さんだわ!』
思わず紗羅は心が弾んだ。
集団とすれ違う紗羅は溢れんばかりの笑顔で達哉を見つめた瞬間、、、
「すまない」
冷たい一言を達哉は紗羅に告げた、紗羅とは目も合わせずに。
「達哉さん・・・『すまない』って・・・いったい何をおっしゃっているの?」
楽屋に戻った紗羅は、ただ達哉の言葉の意味を探っていた。
だけど、答えが見つからなかった。
「ねぇ、温かいハーブティを入れて頂戴。少し濃いめで!」
国民の妖精でいつづけるためにまずは心を落ち着かせようとした。
「紗羅くん!紗羅くん!」
ソファでうたた寝してしまった紗羅を起こしたのは、美肌エージェンシーの大河内取締役だった。
「紗羅くん、落ち着いて聞いてくれるかね。今回の広告の仕事だが、、、紗羅くんは、、、キャンセルになった。」
「え、、、今なんておっしゃったの、、、?」
紗羅は自分の耳を一瞬疑ったのであった。