美肌一族

これが初代の美肌一族。
もう1つのストーリー

紗羅と咲、宿命の女の戦い 33話

祐天寺咲がモデルをつとめた「ボッデガ・タバサ」の2012A/W広告キャンペーンがワールドワイドにはじまった。
テレビCMや雑誌広告はもちろん、世界中のニュースに【東洋の真珠! 美しすぎる祐天寺咲】と華々しく打ち出された。
それもそのはず、モデルをつとめる祐天寺咲の美貌は、透き通った白肌に深い栗色の髪、切れ長の瞳、長い手足、世界のトップモデルにも劣らない日本女性の代表として当然の評価であった。
路上記者会見にて、いくつもの質問がマスコミ陣から飛び交った。
「咲さん! 世界中からの羨望のまなざしをどう受け止めていますかッ?!」
「その美しさの秘訣は一体何なんですか?」
「もちろん、光栄ですわ。女性たちの熱いまなざしはわたくしをより輝かせてくれる・・・そして、このような容姿に産んでくれた両親に感謝するだけですわ」
涼しい表情で言い放つ咲に眩しいばかりのフラッシュが浴びせられている。
その場にいる誰もが咲に見入っていた。そんな矢先、ある質問が飛び出た。
「祐天寺さん! 今回の広告の仕事、実は祐天寺さんの前には美肌紗羅さんが出演予定だったというのは本当ですかッ?!」
咲を囲んだマスコミ陣は一斉に静まり返った。
咲がゆっくり振り向くと、そこにはマイクを握りしめている芸能リポーター 高松七恵が立っていた。
「・・・わたくし、何も存じ上げませんのよ。では、みなさんごきげんよう」
記者たちを後にし、咲は真っ黒なリムジンに乗り込んだ。
「世界の祐天寺咲の会見で、あんな・・・美肌紗羅の名前を出すなんて・・・こんな屈辱を許せなくてよ・・・」
舌打ちをした後、おもむろに携帯を取り出した。
「この写真を見たときの紗羅の顔が楽しみだわ・・・フフフ♥」
携帯に映し出されたのは、ホテルのベッドの上で、抱きあっている達哉と咲の姿であった――。