美肌一族

これが初代の美肌一族。
もう1つのストーリー

紗羅と咲、宿命の女の戦い 35話

世界中のセレブがお忍びで訪れることで有名な地中海に位置するプライベートアイランド。
昨夜遅く紗羅はこの島にたったひとりで到着した。
理由はただひとつ――。 櫻小路達哉と逢うためであった。
島にあるなかでも最上級のコテージのリビングからは、遥か彼方の水平線まで広がる真っ青な海が見える。
紗羅はチェアに腰掛け、ずっと海を見つめていた。
水平線の彼方がオレンジ色に染まるころ、リビングの扉がそっと開いた。
「・・・紗羅」
ゆっくり振り向く紗羅。扉の前にはやつれた表情を浮かべている達哉がいた。
「紗羅、すまない。君を傷つけたくはなかった・・・だからずっと・・・」
「達哉さん・・・わたくしが知りたいことは1つだけ。あなたとの未来を信じたわたくしは・・・間違っていたのかしら?」
「・・・その女性とはたった一度の過ちだった。君は僕にとってかけがえのない女性だ。これまでも、そしてこれからも!」
「・・・分かったわ。もうなにも言葉はいらない・・・そっとわたくしを抱きしめて頂戴!」
紗羅は薄らと涙を浮かべながら達哉の腕のなかに飛び込んだ。
紗羅は、“一度の過ち”という言葉を受け入れた。それが嘘とも知らずに・・・。
《紗羅、ごめんよ。君に嘘をつくなんて! でも、どうしても、君を愛しているんだ!》
達哉は様々な苦悩を胸に忍ばせながら、久しぶりに触れた紗羅の身体をきつく抱きしめた。
東京港区。ロワイアルホテルの最上階にあるプレジデンシャルスイートルーム。
そこには情事を終えたばかりの祐天寺咲がいた。
「・・・そう、達哉の奴、紗羅とよりを戻す気なのね・・・わかったわ」
電話を切った咲はバスローブを羽織り、煙草に火をつけた。
「珍しいね、僕の前で煙草に火をつけるなんて」
浴室から一人の中年男性が現れた。 煙草を消した咲は男に唇を近づけた。
「えぇ、今日だけは許していただきたいわ、櫻小路さん――」
妖しく光る眼差しを放ちながら、祐天寺咲は男と唇を重ね合わせた。
咲と唇を重ね合わせている男、それはなんと、達哉の父親である櫻小路達乃助だった。