美肌一族

これが初代の美肌一族。
もう1つのストーリー

紗羅と咲、宿命の女の戦い 42話

「おはようございます、達哉お坊ちゃま。そろそろお目覚めになりませんと」
「・・・あぁ。今日は送りはいいよ、爺や。1人で会社に行く」
おそらく一睡もしていないであろう達哉はうつろげに言った。
「おや、珍しい。ひょっとして、紗羅様とご一緒ですか?幸せで何よりでございますよ」
まぶしそうな瞳で達哉は、朝の光が差し込める窓を見入った。
『 紗羅、君は僕にとって本当に太陽のようだったんだ 』
ソウル・江南。
美肌紗羅は、日韓交流ドラマ“ Mr.LIE ~雨の中の嘘~”の記者会見のため、数日前より韓国入りしていた。
江南の中心地に位置するCOEXにてまさに開催されようとしている記者発表の大広間には、日韓マスコミが溢れかえっている。
アジアを代表する次世代韓流スターイ・チャンヒョクとアジアのアリスこと美肌紗羅との今世紀最大のカップル誕生とあって、そのツーショットを押さえようとカメラは約100台ほど待機している。
「アニョハセヨ、紗羅!やっと君に逢えた!ホントにウレシイヨ!これからヨロシクネ!」
とイ・チャンヒョクはくったくのない愛くるしい笑顔で紗羅に抱きついた。
「まぁ!プリンス!ソウルの男性は、なんてコミュニケーションがストレートなのかしら!」
紗羅は、今人気絶頂のアジアプリンスの求愛もさらりとかわした。
どんなに魅力的な男性が現れようとも、決して紗羅の達哉への想いは変わることはなかった。
眩しいくらいのフラッシュに目眩がしそうになるほどであった。
二人が目を合わすたびに、マスコミからは歓声があがった。
ドラマの話題つくりとは言え、イ・チャンヒョクの紗羅への求愛っぷりはテレビを通じても変わることはなかった。
「お疲れさま!紗羅。今頃日本のニュースでは貴女のことで持ちきりになってるわよ!あぁ、明日のドラマオープニングの撮影も仕切りが大変だわ!」
鮫島女史は、美肌エージェンシー設立以来の大きな仕事に舞い上がっていた。
それもそのはず、他の日本の有名タレントや大女優を差し置いての大抜擢であったのだ。
スポンサーもアジア有数の大企業陣が名前を連ねている。
高松七恵の先日の忠告もすっかり忘れてしまっているようだ。
慌ただしい日々はあっという間に過ぎた。
撮影の1週間、紗羅とアジアプリンスは毎日マスコミを賑わせていた。
デビューわずか1年も経たない紗羅は一気にスターダムにのし上がった。
連日のファンやマスコミの熱狂ぶりに紗羅は驚きをかくせなかった。
しかし、ハードスケジュールの中、確実に紗羅は美しさに磨きがかかった。
誰かに見られることは、お金では買えない美しさの秘訣である。
羽田空港、VIP通行口。
紗羅は、ようやくサングラスを外す、目の前には、美肌エージェンシー大河内取締役が立っていた。
「まあ、大河内さん。わざわざお迎えに来て下さったの?うれしいわ」
渡航前より,格段と美しさを増した肌と紅潮した頬でにこやかに応えた。
「紗羅くん。実は数日前から達哉君が入院しているー」
大河内は青ざめた顔で告げた。
「え?!達哉が?事故にでも遭ったのかしら?!」
この1週間達哉と連絡を取る暇もなかった紗羅にとって突然の報告であった。
「・・・命に別状はない。ただ・・・彼の入院している先が・・・精神科なんだ」