紗羅と咲、宿命の女の戦い 50話
湾岸沿いにあるイタリアンレストラン。
なかなか予約がとれない有名シェフが腕を振るっている。
「今晩は、祐天寺咲さんが美肌紗羅さんとお食事をされる。とびっきりのごちそうでお出迎えしないと!」
レストランスタッフは今もっとも注目度の高いタレントのお忍びの来店とあって緊張感が走っていた。
先に姿を現したのは、美肌紗羅であった。
お店に入ってから椅子に腰を下ろすまで、薔薇の香りを漂わせて歩く優雅なドレスを身に纏う紗羅に、レストランのスタッフ全員がうっとりと眺めていた。
「お待たせしたかしら」
遅れて咲が登場した。真っ黒なタイトめのドレスの咲は、より一層彼女のストイックさが醸し出されている。
まさに美の二大競演であった。
「紗羅、少し痩せたわね」
咲は優しく紗羅に投げかけたー。
紗羅は大きな瞳を涙で溢れそうになりながらも、明るく微笑んだ。
「咲さん、本当にありがとう」
咲は、その笑顔を見ると、なぜか無性に怒りを憶えた。
「この娘・・・どうして、辛い目に遭わせてもこんなに笑っていられるの?!」
「咲さん?大丈夫?顔色が悪くてよ」
紗羅は、顔色が悪い咲を気にかけた。
「・・・えぇ。お手洗いに」
咲はテーブルを離れた。
間もなく、咲の携帯が鳴り響いた。紗羅は、着信音を消そうと咲の携帯を開いたー。
「・・・こ、これはっ!?」
紗羅は思わず悲鳴に近い大声をあげた。
咲の携帯待ち受け画面には、ベッドの上に横たわる咲と・・・愛する達哉の姿が映っていた。
ー紗羅、今頃悲鳴をあげているわね、フフフー
レストランのテラスで咲が意地悪そうに微笑んだ。