美肌一族

これが初代の美肌一族。
もう1つのストーリー

紗羅と咲、宿命の女の戦い 54話

「達哉、気分はどうだ?何か欲しいものはないか?」
達哉の父・達乃助はベッドの傍に近づく。
「欲しいものなんてないよ・・・出てってくれないか・・・」
力なく達哉は応えた。
九死に一生を得た達哉であったが、自分の犯した罪を知った以上、もはや生きる気力を失ってしまっていた。
ー紗羅、どうか幸せに生きてくれ!ー
ただ、そう願い続ける達哉であった。
ビューティ対決までの紗羅と咲は、対照的だった。
連日あらゆるメディアに登場し自分をアピールする咲、まったく表に登場することなく雲隠れしてしまった紗羅。
実は、美肌家家宝とも言える“美の道場”に紗羅は身を寄せていた。
「精神の美はすべてに通じる」をモットーにしている道場では、メンタルの美しさを追究し、手に入れることが出来るのである。
「紗羅、今のお前にないものは精神の強さだ。何が起きても揺るがない心を持て!」
紗羅の祖母である美肌ダリアは、これまでの紗羅の人生をずっと傍で見続けてきた。
世界でもっとも美しい肌を持つ紗羅、しかし、決定的に足りない何かにも気づいた。
心の弱さは、肌に一番の影響を与えてしまうー。
達哉の裏切りを知ってからの紗羅の心と肌は、すっかりまいってしまっていた。
肌の吸収率がすっかり悪くなり、ハリ・艶が失われていた。
森林の奥に位置するその道場は、一切外からは遮断されている。
聴こえてくるのは、己の心の声だけー、道場に入ったしばらくは紗羅の心から聴こえてくるのは、達哉への想いばかりであった。
紗羅は苦しんだ、なぜ自分ばかりがこんな目に遭うのか、と。
心の声は正直だ、しかしその声を受け入れないとその先に進めないことも分かっていたー。
それから、3ヶ月ー。
ついに、世紀の対決“beauty musse of the year SAKI VS SARA”当日。
舞台は日本武道館。客席はマスコミと紗羅と咲の女性ファンたちで溢れかえっている。
開始時刻15分前ー、司会者や祐天寺咲をはじめとしたスタッフ、が舞台裏に現れた。
関係者は、その咲の気迫のある妖婉さに圧倒された。
一瞬で魅了されてしまうほどの色気が咲の肌からは滲み出ていた。
一方、開演5分前になっても、美肌家スタッフはもちろん、紗羅も現れないー。
まだか?と焦るイベント監督が、美肌家チームの楽屋の扉をノックした。
「今、行きますわ」
紗羅らしき声が聞こえる。
そして、しばらく経って、楽屋の扉がゆっくりと開いたー
「あ、貴女はいったいッ!!??」
そこには、想像を遥かに超えた美肌紗羅が立っていた。