紗羅と咲、宿命の女の戦い 8話
その日のセンチメンタル大聖堂女学院大学部のキャンパスは紗羅を助けた櫻小路達哉の話題で持ちきりだった。
「ねぇ、紗羅。東洋一のハンサムボーイに抱きしめられた感想はいかが?」
「うらやましいっ!わたくしも抱きしめられたぁい♥」
質問攻めが耐えられない紗羅は教室を抜け出し、いつもの場所へ向かった。
学校内の世界遺産にもなっている大庭園の端の丘には展望台が造られている。
紗羅はこの丘の上の展望台がお気に入りだった。
よく一人で読書をしたり、物思いにふけったりしている。
「ふぅ。どの国の女性もおんなじね...」
紗羅はため息混じりにつぶやいた。
展望台からの眼下の素晴らしいパノラマをしばらく満喫していた紗羅に向かい、
「おーい!君!」と手を振る東洋人らしき男子学生がいた。
「あっ!あの方は...!」
その男子学生は丘の上にある展望台に向かってきた。
「やぁ、君!先日は大丈夫だったかい?」
なんと現れた男性は、櫻小路達哉であった。
「えぇ、あのときは本当にありがとう」
「君って見かけによらず、おてんばなんだね。あ、君の名前は?」
そう紗羅に話しかける達哉の笑顔は、展望台から眺める広大な風景のように爽やかで透明感のある笑顔だった。
それから日が暮れるまで、ふたりはお互いのいろんなことを話し続けるのだった―。